『雪、無音、窓辺にて。』歌詞解読

涼宮ハルヒの憂鬱キャラクターソング6曲の中でも一押しの『雪、無音、窓辺にて。』。
あまりに気に入ったので、歌詞を解読してみます。
なお、解読するさいにアニメ未放送部分の知識が出てくるので、原作未読者は一通り読んでから出直すか、ネタバレ覚悟で突っ込んできてください。
涼宮ハルヒの消失
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イントロ

音も無い世界に
舞い降りた I was snow

ここは導入部で、最後にこの文が出てくるのでとりあえず無視。

「生み出されてから三年間、わたしはずっとそうやって過ごしてきた」

ずっとそうやってすごしてきたということは、3年の間に長門に変化は無かったということですね。

1番

なにかが壊れて なにかが生まれる
繰り返し無駄なことさえ
やめない人たち 不思議なひとたち
眺める私も含まれた

壊れて生まれるというのは生死のことかな? 作中の朝倉の話によると死の概念がわからないみたいだし。
やめない人たち不思議な人たちもそのながれで人類のことを指すのかもしれないし、見つかりもしない世界の不思議を探し続けようとするハルヒSOS団)のことかもしれない。
観察者だったはずなのに強引に団員にされたのがという流れからいくとSOS団と考えるほうが自然な気がします。

ほどけない問題など 在りはしないと
知ってても 複雑な段階が物語り創っていく

自分には無い(と思っていた)恋愛という感情が生まれてつつあることに戸惑いを感じてる、といったところでしょうか。

私にも唯ひとつの 願望がもてるなら
記憶の中 最初からを本にして窓辺で読む
ページには赤い印 現れて踊りだす
つられそうだと思うなんて どうかしてるけれど
禁じられたワードを 呟けば最後…

1行目と2行目だけを繋げると違和感があるので、2〜4行目を1つとして1行目と繋げるといいのかも。
記憶を最初から本にして読むというのは過去を振り返るということの長門らしい表現でしょう。で、赤い印。
印の代表的な色として赤を選んだとも取れますが、深読みするなら、赤といえばハルヒのイメージカラー。ハルヒが起こしたことで印をつけるほどの事件といえば、やっぱりキョンと2人きりで閉鎖空間に行ったことでしょう。
踊りだすというのは、べつにハルヒがマジックポイント吸い取ろうとしてるわけではなく、目立っていることの比喩でしょう。
そして、そのハルヒの起こしたことにつられそうになる。これは、まさに消失の事件ですね。となると、禁じられたワードというのは、ハルヒの力を使うための『呪文』。

「この銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。それが、わたし」

そうなると、歌の間の台詞も明確な意味を持ち始めます。自分の正体をキョンに明かしたときの台詞ですが、この場合自分自身が何者なのかを再確認している意味に取れます。
そんなわけで、2番は事件後我に返った長門

2番

どこかへ逃げるの どこにも逃げない
それだけで価値ある意識
めげない人たち 優しい人たち
動かされた私の未来

逃げるというのは、SOS団からいなくなること、キョンの元から居なくなること。なので、病室でのキョンとの話にあった長門の処分に関連するところでしょう。
めげない人、やさしい人というのはSOS団、とくにキョンでしょう。一連の事件で多大な迷惑をかけたにもかかわらず、キョンは許してくれて、長門がそのままいることを望んだ。
そして、長門の処分は回避された、と。

流れ出す強い力 幸せ呼ぶと
気が付いた そのままで必要な物語り印されたら

強い力といえば、ハルヒの力と長門の力の2つがありますが、長門の歌ということで普通に考えると、この力があるからこそSOS団にいる意味がある、キョンと一緒にいる意味があるという感じでしょうか。
深読みすると、ハルヒの力があるほうが適度に非日常な出来事が起きてキョンにとって幸せだという意味にも取れます。
そして、長門SOS団の一員として居続けることを選ぶ。

存在が変わる程の 夢を持ってみたくなる
感情へと共感へと 繋がれば窓辺に立ち
静けさに抱かれながら また今日も待っている
ゆるやかに降る 水じゃなくてもっと寂しい粒

夢はおそらく普通の人間としてキョンと一緒に居ることでしょう。
感情は恋愛感情、共感は・・・何だろう、人間との共感?
窓辺で待つのは部室のことかな?キョンが部室に入るとたいてい居ますし。
ゆるやかに降る水じゃない粒といえば、雪。そう、ユキであり有希である。寂しいというのは長門の心も比喩してるのだろうか?

色が無い世界で
見つけたの You are star

ハルヒの世界で色がないと言えば閉鎖空間ですが、長門と閉鎖空間はあまり接点が見えてこない(消失の改変世界もある意味閉鎖空間といえなくも無いですが)ので、違うかなと。
で、色が無いということは何も見えない。何の見えないといえば暗闇。そんなわけで、消失の最後の病室でのシーンあたりではないかと思います。
you are star の you はキョンで間違いないでしょう。
病室での2人きりの会話で、自分のキョンへの気持ちを初めて自覚した、といった感じでしょうか。

「危機が迫るとしたらまずあなた」

これからもキョンを守るためにも、そばに居続けたいという思いの宣言でしょうか。あと、前の部分の you がキョンだということを印象づける意味もありそうです。

ラスト

存在が変わる程の 夢を持ってみたくなる
感情へと共感へと 繋がれば窓辺に立ち
静けさに抱かれながら また今日も待っている
ゆるやかに降る 水じゃなくてもっと寂しい粒

2番のサビと同じなので割愛。

音も無い世界に
舞い降りた I was snow

音が無いと言えば、真空である宇宙が考えられますが、舞い降りたという表現と合わないので却下。雪が積もった状態も独特の静けさがありますが、場所や季節を考えると違うような気がします。というわけで、正直わかりません。
I was snow は I am snow の過去形。I am snowを訳すと『私はゆき』であり、長門の名前と掛けられたものだとわかります。しかし、am ではなく was 、過去形なので、名前が変わった・・・とそんなわけは無く、昔の自分と比べて心や存在意義などが変わったことを意味するのではないかと思います。
もう一つ、『雪だった』と深読みすると、雪が変化する状況といえば、春が来て解ける。なので、長門の無感情で冷たく閉ざされていた心に春が来た、感情が芽生えたというふうにも考えられます。

「最初から、わたししかいない。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でも、聞いて。それが、わたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由。信じて」

いろんな解釈ができそうで難しいですが、簡単にまとめると自分の気持ちを伝えたい長門の胸のうち、といった感じでしょうか。
既存の台詞を旨く組み合わせた構成の妙ですね。

涼宮ハルヒの憂鬱 キャラクターソング Vol.2 長門有希